先の投稿で、筆者は舛添都知事の公用車利用による別荘送迎問題について感想を述べたが、今度は少し前に問題視された、舛添さんの都市外交と海外出張豪遊問題についての感想を述べてみたい。
実は筆者の様な研究職公務員もかなりの頻度で海外出張を経験してきたが、その場合には必ず現地での訪問者のアポ取りを数か月(少なくとも3か月、多くは6か月くらい)前から実施しておく必要がある。筆者のような研究者の場合、海外研究機関や研究者とのネットワークがあるから、電子メールで直接先方とコンタクトを取って比較的容易に訪問調整をすることが出来る。
したがって、現地日本国大使館に対して接遇支援を依頼することなど、ほとんどない。そういう意味では、研究職の公務出張は割と気楽にできるのだが、それでも調整には3か月くらいの時間は必要である。公務出張では通常の赤い個人パスポートではなく、公用パスポートを事務方が外務省に申請してそれを出張時に携帯する必要があるのだが、その発行手続きの関係からも数か月の時間が必要なのである。
舛添さんの公務出張の場合、その頻度を年間4回、つまり3か月に1回程度を考えると、知事を補佐する担当部局である都の政務企画局の職員はほとんど年がら年中、都知事の外国訪問先との調整に追われている実態があるのかもしれない。そして、彼らの場合、我々研究者とは違って電子メールで簡単に訪問調整できるわけでは決してないだろう。
おそらく、現地日本国大使館の接遇支援を都から依頼する場合が多いのではないか。その点を考えると、豪遊問題の本質が見えてくるように筆者には思えるのである。なぜなら、現地大使館としては国の外交を担当する立場にあるわけでもない都知事の接遇を、全力かつ本気で支援するとは到底思えないからだ。
実は筆者も、10年以上前に、外交官パスポートを貰ってある外国の日本国大使館に勤務した経験がある。その場合、当然のことながら地方自治体の首長御一行が来訪することなどほとんどなく、彼らのために接遇支援をした経験も全く記憶にない。
つまり、いくら舛添都知事本人が都市外交を提唱して自分は英語やフランス語が得意だと力説しても、地方自治体の首長に多忙な時間を割いて面会してくれるような暇な要人は滅多にいないのが実態であろう。そんな無駄な仕事のために現地の日本国大使館が全力投球するはずもないし、相手側の政府要人のアポを抑えることも現実には難しいと思う。
したがって、都知事の訪問調整そのものの大部分は、外交経験不足の政務企画局が押し付けられているのが実態ではないかと思う。その結果、現状の3か月サイクルでは相手国訪問先のアポはなかなか取れないし、日程をタイトに詰め込むことも本来出来ないから、無駄な空港貴賓室を借り受けての舛添知事の待ち時間の暇つぶしや、あまり意味のないスウィートルームでの記者会見などを頻繁に出張日程に入れざるを得ないのではないか。
つまり、舛添さんが提唱している地方自治体首長の都市外交など、外国現地の訪問先にとっては、多忙な時間を割いてまで優先する程の重要性を最初から伴っていないのだろう。結局、都知事が出来る都市外交とは、植樹やシンクタンクでの講演、現地での記者会見、そしてパレードへの参加など、ほとんど儀礼的な内容の日程しか組み込むことは出来ないのが実態なのではないだろうか。
筆者の様な一般公務員でも、欧米に公務出張する場合には、旅費規定上はビジネスクラスを利用することが出来ると聞いたことがある。しかし、我が国の財政上の経費削減の観点から、一般公務員の公務出張は原則的に通常料金のエコノミークラス利用であるし、大臣を含む特別職の場合でも公務出張である以上ビジネス位の利用までである。安倍総理大臣など政府要人が、政府専用機を外国出張に使うことが出来ること位が公務出張における例外ではないか。
それを舛添都知事がファーストクラスを恒常的に利用しているというのでは、都の旅費規定上の問題は仮に無いとしても、自ら慎んでビジネスクラスの利用に格下げすべきであろう。また、記者会見に用いること位しかない現地一流ホテルのスウィートルーム利用については、都条例の宿泊費限度額約4万円の規定を5倍程度超過しているのだから、今後は直ちに中止すべきだろう。
そもそも、都の人事委員会では、都民の批判を浴びて自分達の責任問題になりかねないような、都条例で規定された都知事の宿泊費限度額オーバーの承認など、端からしているわけはないと筆者は考える。実態としては、多分、政務企画局が起案した予算執行計画案の書類に関して、言い訳程度に都の人事委員会に諮っているという程度の簡単な手続きしか踏んでいない可能性が高いと思う。
筆者の外国出張の経験では、現地訪問先で相手側との実質的な意見交換をする日程をタイトに組み込んでいないような、曖昧な事前調整しかできない程度の公務出張は、ほとんど税金の無駄遣いである。政策効果は、ほとんど期待できないといっても過言ではない。
舛添都知事の都市外交に関する公務出張については、現在の報道から筆者が感じるところでは、その費用対効果のバランスが大きく崩れているような、政策効果の乏しいものであるという残念な感想を抱かざるを得ないのである。
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