今日のzakzak(夕刊フジのサイト)での高橋洋一先生の連載、「「日本」の解き方」のタイトルは、「ブラック企業に是正を促す脱デフレ 雇用改善で人材確保が困難に」であった。
この先生はリフレ論の代表的論客だが、ご多分に漏れず、本日開陳されていた上記記事の内容も、実態を見ない机上の空論に過ぎないものであった。
高橋さんの論理は、概ね以下のとおりである。すなわち、アベノミクスによるマクロ金融政策(つまりは日銀の量的緩和)によってデフレから脱却できたため、最近雇用環境が激変して大学生の就職率も伸びており、ブラック企業は労働者から敬遠されるようになるため、雇用の確保が困難となり、おのずと淘汰されていくというものだ。加えて、厚生労働省によるブラック企業名の公表措置が、この淘汰を後押しする効果を持つのだそうだ。
何だか「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺を髣髴とさせるような、無理やりこじつけた感のある論理の展開である。
この論旨にまず論理のすり替えがあるのは、量的緩和でデフレを脱却して雇用環境が激変するのは、あくまでも大企業のことであって、そもそもハローワークを通じて求人・求職しているような中小企業や、ましてや零細なブラック企業の大多数の雇用環境とは、ほとんど無関係な論旨であるということだ。
高橋先生が効果があるとのたまう、厚労省のブラック企業名の公表措置も、その対象は大企業に過ぎない。
したがって、ワタミやファーストリテイリングクラスの会社なら、厚労省に企業名を公表されると自社の雇用確保に痛手かもしれないが、そんなことは最初から関係ない中小零細のブラック企業は、今まで通り、人材の使い捨てを続けるだろう。
高橋さんは御自分が東大を出て財務官僚になり、大学教授に華麗な転身を果たした人であるからか、分析の視点がエリートや大企業のデータに向きすぎている。彼は、リフレ派によくある、弱者の実態をよく知らないで机上の空論を述べているに過ぎないと筆者は思う。
そもそもブラック企業は、雇用の正規化や労働者の賃金を改善することで雇用を確保しようとするような真っ当な感覚の経営をせず、労働市場であぶれたような弱い人材を、脅しすかしの飴と鞭を用いて安く使い回すビジネスモデルを確立しているからこそ、ブラックなのである。新興宗教の、お布施増額目的の信者勧誘ビジネスと同じ収奪モデルなのだ。
したがって、ブラック企業が金融緩和による雇用環境改善で人集めに支障を来したからといって、高橋氏の主張される論理のように、雇用を確保するために賃上げなどに経営方針を転換するはずがない。そんな面倒で無駄なことをするくらいなら、多数の零細ブラック企業は、むしろ別の業態の新たな搾取システムを再構築することで、自社の存続を図ろうとするに違いない。
大体、エリートでもない普通の大学生が、簡単に大企業に入れるくらい雇用が逼迫すれば、恐らく高橋さんの言われる通りブラック企業は自然淘汰されていくだろうが、多分そんな時代は日本にもう来ないだろう。
よって、金融緩和がブラック企業を淘汰するという高橋氏の論理はまやかしであり、金融政策ではなく、あくまでも雇用・労働政策としてブラック企業の問題に対処していくべきだろう。
2015年5月22日金曜日
2015年5月21日木曜日
パルミラ遺跡がISISに破壊される危機について
ロンドンの「シリア人権監視団」のリポートによると、5月13日からシリア政府軍とISIS武装勢力が戦闘を続けていたシリア砂漠内の交通の要衝、タドモール中心部が20日、ISISに制圧されたとのことだ。政府軍は、その一部を残して後方に撤退した模様である。
このタドモールという街は、ISISが抑えている東部ユーフラテス川沿いの都市デリゾールと首都ダマスカス、さらにデリゾールとホムスという、これも交通の要衝である都市とを結ぶ砂漠中の結節点であるオアシスに位置している。その戦略的な重要性から、両軍が1週間にわたって激しい争奪戦を繰り広げたわけである。
実は、1980年ユネスコの世界遺産に登録された、シリア国内第一の観光資源であるパルミラ遺跡は、このタドモールの街のすぐ南西に位置している。市街地から、遺跡の中心部まで歩いて行ける程の距離しか離れていない。
これまでもISISは、イラク国内にある古代アッシリア時代の重要遺跡であるニムルド遺跡やモスル博物館の彫像を、イスラーム以前の偶像を破壊すると称して壊したり、遺物を売却する盗掘ビジネスでその活動資金を稼いできた。
パルミラ遺跡にISISがもし侵入したら、この貴重な世界遺産が破壊され、重要な彫像類が持ち出されて売り飛ばされてしまうだろう。もしそうなれば、アフガニスタンのタリバーンが、かつてバーミヤンの大仏を爆破した時以上の世界史的な大損害となるだろう。
というのも、パルミラには世界一と言っても過言でない程に保存状態が良好な、紀元2から3世紀のローマ帝国期の石でできた大モニュメントが多数残存しているからだ。例えば、遺跡中心部を貫く大列柱道路と、その中心にある四面門(Tetrapylon)は夕日に映えて実に見事である。観光用ラクダに乗って、往復することもできる。
列柱道路の周辺には、巨大なベル(古代セム系民族に最も崇拝された豊穣神バールのこと。レバノンのベッカー高原にあるバールベックでも有名)を祀る大神殿や、ほぼ当時のままに残っている円形劇場やアゴラ(取引場)の遺跡を見ることができる。
これだけ見事な保存状態を維持しているローマ時代の隊商都市の遺跡は、他には、パルミラ繁栄以前にアラビア半島とシリアとの交易路の中心都市であった、ヨルダンのぺトラ(こちらは、映画「インディ・ジョーンズ」で有名な)遺跡位であろう。
ちなみに中東で最も有名な古代遺跡3Pとは、パルミラ、ぺトラと、アレクサンドロス大王に焼き払われた古代アケメネス朝ペルシャ帝国時代のイランにある宮殿遺跡ペルセポリスの、頭文字の3つのPを並称したものだ。
パルミラには、遺跡中心部の西方に「墓の谷」があって、そこにあるエラベール家という古代富豪の塔墓は、登ると非常に眺望が良く、また壁画が綺麗に描かれている三兄弟の地下墓室といった見所もある。近くの岩山の上には、アラブ城があって、ここは遺跡全体を見下ろすことができる絶好の撮影スポットである。
今から思えば、内戦勃発前の2010年夏に、家族を連れてシリアとヨルダン両国を旅行しておいて本当に良かったと思う。ヨルダンのぺトラ遺跡見学と死海での浮遊体験は、またいつかできるだろうが、ISISに破壊されてしまったら、パルミラ遺跡を二度と見ることができないかもしれない。かつて自分が赴任していた懐かしいダマスカス旧市街へも、シリアの内戦が終わるまで、再び行くことはできないだろう。
アメリカ軍は、ISISをもっと激しく空爆してでも、パルミラ周辺部から是非追い出してもらいたいと思う。
このタドモールという街は、ISISが抑えている東部ユーフラテス川沿いの都市デリゾールと首都ダマスカス、さらにデリゾールとホムスという、これも交通の要衝である都市とを結ぶ砂漠中の結節点であるオアシスに位置している。その戦略的な重要性から、両軍が1週間にわたって激しい争奪戦を繰り広げたわけである。
実は、1980年ユネスコの世界遺産に登録された、シリア国内第一の観光資源であるパルミラ遺跡は、このタドモールの街のすぐ南西に位置している。市街地から、遺跡の中心部まで歩いて行ける程の距離しか離れていない。
これまでもISISは、イラク国内にある古代アッシリア時代の重要遺跡であるニムルド遺跡やモスル博物館の彫像を、イスラーム以前の偶像を破壊すると称して壊したり、遺物を売却する盗掘ビジネスでその活動資金を稼いできた。
パルミラ遺跡にISISがもし侵入したら、この貴重な世界遺産が破壊され、重要な彫像類が持ち出されて売り飛ばされてしまうだろう。もしそうなれば、アフガニスタンのタリバーンが、かつてバーミヤンの大仏を爆破した時以上の世界史的な大損害となるだろう。
というのも、パルミラには世界一と言っても過言でない程に保存状態が良好な、紀元2から3世紀のローマ帝国期の石でできた大モニュメントが多数残存しているからだ。例えば、遺跡中心部を貫く大列柱道路と、その中心にある四面門(Tetrapylon)は夕日に映えて実に見事である。観光用ラクダに乗って、往復することもできる。
列柱道路の周辺には、巨大なベル(古代セム系民族に最も崇拝された豊穣神バールのこと。レバノンのベッカー高原にあるバールベックでも有名)を祀る大神殿や、ほぼ当時のままに残っている円形劇場やアゴラ(取引場)の遺跡を見ることができる。
これだけ見事な保存状態を維持しているローマ時代の隊商都市の遺跡は、他には、パルミラ繁栄以前にアラビア半島とシリアとの交易路の中心都市であった、ヨルダンのぺトラ(こちらは、映画「インディ・ジョーンズ」で有名な)遺跡位であろう。
ちなみに中東で最も有名な古代遺跡3Pとは、パルミラ、ぺトラと、アレクサンドロス大王に焼き払われた古代アケメネス朝ペルシャ帝国時代のイランにある宮殿遺跡ペルセポリスの、頭文字の3つのPを並称したものだ。
パルミラには、遺跡中心部の西方に「墓の谷」があって、そこにあるエラベール家という古代富豪の塔墓は、登ると非常に眺望が良く、また壁画が綺麗に描かれている三兄弟の地下墓室といった見所もある。近くの岩山の上には、アラブ城があって、ここは遺跡全体を見下ろすことができる絶好の撮影スポットである。
今から思えば、内戦勃発前の2010年夏に、家族を連れてシリアとヨルダン両国を旅行しておいて本当に良かったと思う。ヨルダンのぺトラ遺跡見学と死海での浮遊体験は、またいつかできるだろうが、ISISに破壊されてしまったら、パルミラ遺跡を二度と見ることができないかもしれない。かつて自分が赴任していた懐かしいダマスカス旧市街へも、シリアの内戦が終わるまで、再び行くことはできないだろう。
アメリカ軍は、ISISをもっと激しく空爆してでも、パルミラ周辺部から是非追い出してもらいたいと思う。
2015年5月20日水曜日
婚活における男女の世代ギャップについて
昨日、新人類世代に属する筆者の婚活について、男性目線からの勝手な所見を述べたのであるが、よくよく考えてみると、現在婚活に取り組んでいる30代日本人男性の多くが、当時企業の有効求人倍率が1を下回っていた頃の、いわゆる「就職氷河期世代」に属していることに気付いた。
他方で、現在20代後半くらいの結婚適齢期にある女性の多くは、「就職氷河期世代」の次の「ゆとり世代」に属していると思われる。
こうした時代背景を再度鑑みると、どうも、筆者が昨日述べたような、個々の男女間の婚活に対する認識のギャップだけに問題を単純化すべきではないように思えてきた。
つまり、現在婚活に臨んでいる男性中多数を占めている「就職氷河期世代」の男性は、その前の世代の男性達よりも圧倒的に就職困難な時期に偶々遭遇したため、手元に統計データがないのであくまでも想像に過ぎないが、非正規雇用の人が多いのではないだろうか。
とするならば、昨日述べたような、女性側の男性側に期待する年収400万円から600万円というハードルをクリアするのは、土台無理な話であったのかもしれない。少なくとも、その理想の年収基準をクリアできる人の割合が、その前の世代より相当減少していることは容易に想像が付くだろう。
他方で、現在婚活適齢期に属する女性の主流派である「ゆとり世代」の女性は、そもそも日本が好景気であった時代を知らず、最初から不況であることを婚活に際しての判断の準拠材料にしていると思われる。そのため、彼女らは、あるいは過度のリスク回避と安定志向を無意識に求めている可能性があるだろう。
そうなると、最近の若い女性に増えていると言われる専業主婦志向についても、その背景を婚活男女の世代間ギャップの問題に帰結させることができるかもしれない。
仮にこの分析が正しく、婚活適齢期の男性側が非正規雇用者多数で、女性側が専業主婦志向多数であるのが実態であるとすれば、これはもはや婚活男女の認識のギャップだけで片付けられる問題とは言えないだろう。まさにバブル崩壊後の日本社会が抱える構造的要因に、未婚者急増問題の本質があると言える。今後、より詳細なデータを確認してみる必要がありそうだ。
いずれにしても、新人類世代の男性と比べて、今の男性の婚活に対する基礎体力が不足している懸念については、女性側も十分に考慮しておくべきだろう。何と言っても、現在の婚活男性サイドの資質とは本来無関係かもしれないような、日本経済の不況期に不運にも遭遇した結果が、彼らの多くの経済力不足を招いているだけなのかも知れないからである。そこの所は、寛大な目で、「ゆとり世代」の婚活女性も見てやるべきではないだろうか。
他方で、現在20代後半くらいの結婚適齢期にある女性の多くは、「就職氷河期世代」の次の「ゆとり世代」に属していると思われる。
こうした時代背景を再度鑑みると、どうも、筆者が昨日述べたような、個々の男女間の婚活に対する認識のギャップだけに問題を単純化すべきではないように思えてきた。
つまり、現在婚活に臨んでいる男性中多数を占めている「就職氷河期世代」の男性は、その前の世代の男性達よりも圧倒的に就職困難な時期に偶々遭遇したため、手元に統計データがないのであくまでも想像に過ぎないが、非正規雇用の人が多いのではないだろうか。
とするならば、昨日述べたような、女性側の男性側に期待する年収400万円から600万円というハードルをクリアするのは、土台無理な話であったのかもしれない。少なくとも、その理想の年収基準をクリアできる人の割合が、その前の世代より相当減少していることは容易に想像が付くだろう。
他方で、現在婚活適齢期に属する女性の主流派である「ゆとり世代」の女性は、そもそも日本が好景気であった時代を知らず、最初から不況であることを婚活に際しての判断の準拠材料にしていると思われる。そのため、彼女らは、あるいは過度のリスク回避と安定志向を無意識に求めている可能性があるだろう。
そうなると、最近の若い女性に増えていると言われる専業主婦志向についても、その背景を婚活男女の世代間ギャップの問題に帰結させることができるかもしれない。
仮にこの分析が正しく、婚活適齢期の男性側が非正規雇用者多数で、女性側が専業主婦志向多数であるのが実態であるとすれば、これはもはや婚活男女の認識のギャップだけで片付けられる問題とは言えないだろう。まさにバブル崩壊後の日本社会が抱える構造的要因に、未婚者急増問題の本質があると言える。今後、より詳細なデータを確認してみる必要がありそうだ。
いずれにしても、新人類世代の男性と比べて、今の男性の婚活に対する基礎体力が不足している懸念については、女性側も十分に考慮しておくべきだろう。何と言っても、現在の婚活男性サイドの資質とは本来無関係かもしれないような、日本経済の不況期に不運にも遭遇した結果が、彼らの多くの経済力不足を招いているだけなのかも知れないからである。そこの所は、寛大な目で、「ゆとり世代」の婚活女性も見てやるべきではないだろうか。
2015年5月19日火曜日
NHKニュース おはよう日本「特集 最新婚活事情」に関する所見
今朝の7時台のNHKニュース「おはよう日本」で、最新の婚活事情が特集されていた。それによると、配偶者のいない日本人の割合は80年代頃から増加しており、国の推計によると女性の約45%、男性の約41%に上るそうだ。
そういうわけで、最近のNHKではよく婚活事情が取り上げられている。今朝の特集では、街コン(街ぐるみでの大規模な合コンの意味らしい)での利便性向上のために結婚情報誌の出版会社が開発した、事前に共通点の多い相手を自動検索するアプリや、シングルマザーやシングルファーザーのための託児付きの婚活パーティーの存在などが紹介されていた。
どちらも大変興味深かったのであるが、データ上の条件をより効率的にマッチングさせることや、いわゆる「出会いの機会」を向上させるだけでは、恐らく男女間の婚活に抱く認識上のミスマッチを解消することはできないと思う。
それというのも、筆者自身が39歳でようやく結婚できたという晩婚であったため、それなりに婚活なるものを実践した経験を持っているからである。そこで、今日は婚活について、あくまでも男目線に立って自分なりの所見を披露してみたい。
まず、婚活とは、男はあくまでも女性に選ばれる立場であることを再認識しなければならない。つまり、婚活における男側の置かれた立場は、結婚適齢期の女性に選ばれるために、他の男との不断の競争状態を強いられているということだ。
この点に関する認識が甘く、自分に選択肢があると誤認している男性が多いと思う。学歴、年収、容姿、それに加えて最近は家事・育児の遂行能力など、他の男に対していかに自分が比較優位であるか、それをまず具体的に女性サイドに示さなければならないのが婚活成功の前提条件なのである。
それを忘れて、「結婚したら家庭に入ってほしい」とか、「お金が無くとも心が大切でしょう」とか、女性の選択肢を自ら狭めるような頓珍漢な言動をする男性がまだいるのではないか。このタイプで結婚できない人が、自分に自信のあるエリート男性には特に多いと思われる。
逆に、客観的に見て自分に経済力や自信のない男性も、婚活では絶対に成功しない。女性サイドは、平均的に男性に対して年収600万円以上の稼ぎを期待している。これは、昨今の不況下に生きている30代位の結婚適齢期の日本人男性にとっては、中々高いハードルと言えるだろう。この基準を満たしているのは、同世代男性の4、5%程度に過ぎないだろう。
しかし、自分の経験で考えても、この程度の年収が確保できなければ、妻が仮に専業主婦となった場合を想定すると、東京都内で子供1人を私立中学に入れることも、夏休みにちょっとした家族旅行に出かける余裕さえも、恐らく諦めることになる。
ただし、600万円を世帯年収と考えれば、仮に夫の年収が400万円でも、妻が共働きしてくれればクリアできる可能性は大きい。その意味で、年収400万円位に到達している男性は、条件次第で婚活に成功できる可能性があるのではないか。しかし、この場合、女性側との条件のマッチングは非常に難しくなるだろう。
さらに、婚活が成功するのは、男の年齢上、まず39歳までと考えた方が良い。これ以上の年齢になると、仮に結婚できても、定年までに子供を大学卒業まで無事養育できるかどうか、ギリギリの状態に陥る羽目となるからだ。逆に、39歳までならば、10歳くらい若い女性と結婚できる余地も男性側に残されている。実を言うと筆者は、それで結婚できたモデル・ケースなのである。妻からは、「もしあなたが、当時40歳だったとしたら、多分結婚しなかっただろう」と言われたことがある。
実際の国勢調査(2005年人口動態統計)からデータを算出すると、40代独身男女の結婚できる確率は、いずれも1%程度で2%に達しないと思われる。
したがって、男性サイドは、何としても39歳までに、婚活を終えなければならないと言えるだろう。
このように、婚活において選択肢はあくまでも女性側にあり、男性側が女性を選択できる余地はほぼ皆無と言ってよいのであるが、男性側が唯一考慮すべき点は、結婚適齢期の年齢に至っても母親離れのできない女性とだけは、絶対に結婚してはいけないということだけだろう。たとえ、如何に相手の容姿が自分の好みであったとしても、この原則だけは曲げない方が良いと思う。
自分の短い婚活経験では、意外とこういう母娘密着型の女性が多かった印象がある。女性が男性のマザコンを毛嫌いするのと同様に、女性のマザコンも結婚した後に、夫婦間で解決困難な(例えば妻の母の介護等の)様々な問題を生じさせかねないリスクを伴っているからである。
そういうわけで、最近のNHKではよく婚活事情が取り上げられている。今朝の特集では、街コン(街ぐるみでの大規模な合コンの意味らしい)での利便性向上のために結婚情報誌の出版会社が開発した、事前に共通点の多い相手を自動検索するアプリや、シングルマザーやシングルファーザーのための託児付きの婚活パーティーの存在などが紹介されていた。
どちらも大変興味深かったのであるが、データ上の条件をより効率的にマッチングさせることや、いわゆる「出会いの機会」を向上させるだけでは、恐らく男女間の婚活に抱く認識上のミスマッチを解消することはできないと思う。
それというのも、筆者自身が39歳でようやく結婚できたという晩婚であったため、それなりに婚活なるものを実践した経験を持っているからである。そこで、今日は婚活について、あくまでも男目線に立って自分なりの所見を披露してみたい。
まず、婚活とは、男はあくまでも女性に選ばれる立場であることを再認識しなければならない。つまり、婚活における男側の置かれた立場は、結婚適齢期の女性に選ばれるために、他の男との不断の競争状態を強いられているということだ。
この点に関する認識が甘く、自分に選択肢があると誤認している男性が多いと思う。学歴、年収、容姿、それに加えて最近は家事・育児の遂行能力など、他の男に対していかに自分が比較優位であるか、それをまず具体的に女性サイドに示さなければならないのが婚活成功の前提条件なのである。
それを忘れて、「結婚したら家庭に入ってほしい」とか、「お金が無くとも心が大切でしょう」とか、女性の選択肢を自ら狭めるような頓珍漢な言動をする男性がまだいるのではないか。このタイプで結婚できない人が、自分に自信のあるエリート男性には特に多いと思われる。
逆に、客観的に見て自分に経済力や自信のない男性も、婚活では絶対に成功しない。女性サイドは、平均的に男性に対して年収600万円以上の稼ぎを期待している。これは、昨今の不況下に生きている30代位の結婚適齢期の日本人男性にとっては、中々高いハードルと言えるだろう。この基準を満たしているのは、同世代男性の4、5%程度に過ぎないだろう。
しかし、自分の経験で考えても、この程度の年収が確保できなければ、妻が仮に専業主婦となった場合を想定すると、東京都内で子供1人を私立中学に入れることも、夏休みにちょっとした家族旅行に出かける余裕さえも、恐らく諦めることになる。
ただし、600万円を世帯年収と考えれば、仮に夫の年収が400万円でも、妻が共働きしてくれればクリアできる可能性は大きい。その意味で、年収400万円位に到達している男性は、条件次第で婚活に成功できる可能性があるのではないか。しかし、この場合、女性側との条件のマッチングは非常に難しくなるだろう。
さらに、婚活が成功するのは、男の年齢上、まず39歳までと考えた方が良い。これ以上の年齢になると、仮に結婚できても、定年までに子供を大学卒業まで無事養育できるかどうか、ギリギリの状態に陥る羽目となるからだ。逆に、39歳までならば、10歳くらい若い女性と結婚できる余地も男性側に残されている。実を言うと筆者は、それで結婚できたモデル・ケースなのである。妻からは、「もしあなたが、当時40歳だったとしたら、多分結婚しなかっただろう」と言われたことがある。
実際の国勢調査(2005年人口動態統計)からデータを算出すると、40代独身男女の結婚できる確率は、いずれも1%程度で2%に達しないと思われる。
したがって、男性サイドは、何としても39歳までに、婚活を終えなければならないと言えるだろう。
このように、婚活において選択肢はあくまでも女性側にあり、男性側が女性を選択できる余地はほぼ皆無と言ってよいのであるが、男性側が唯一考慮すべき点は、結婚適齢期の年齢に至っても母親離れのできない女性とだけは、絶対に結婚してはいけないということだけだろう。たとえ、如何に相手の容姿が自分の好みであったとしても、この原則だけは曲げない方が良いと思う。
自分の短い婚活経験では、意外とこういう母娘密着型の女性が多かった印象がある。女性が男性のマザコンを毛嫌いするのと同様に、女性のマザコンも結婚した後に、夫婦間で解決困難な(例えば妻の母の介護等の)様々な問題を生じさせかねないリスクを伴っているからである。
2015年5月18日月曜日
ISIS攻撃の地上戦力を、シーア派民兵に頼ることの弊害
中東の衛星テレビ局アル・ジャジーラの報道によると、イラク西部スンナ派居住地域アンバール県の中心都市ラマディが、5月17日にISIS武装勢力の攻撃によって制圧されたとのことである。
ラマディは、シリアからユーフラテス川に沿ってイラクに越境攻撃してきたISISにとって、シリアおよびヨルダン国境との交通線を抑えるためにも是非とも確保しておきたい要衝であり、近くには米空軍の基地もある。イラクの首都バグダードからは、西方にわずか110km程度の距離しか離れていない。
この戦略上極めて重要な都市が陥落してしまうとは、依然としてイラク政府軍と治安部隊の作戦遂行能力が大いに不足していることを物語っている。3月3日にイランのイスラーム革命防衛隊、特にその特殊部隊であるアル・クッズ(クッズとはエルサレムを意味する)の影響下にあるシーア派民兵の力を借りて、ようやくティクリートをISISから奪還したというのに、その成果を無にしかねないイラク政府側の失態と言えるだろう。
バグダードのアバディ首相は、劣勢に陥った政府軍を増援するために、シーア派民兵のアンバール県への投入を要請したようだが、これは極めてリスキーな選択である。
どうもマリキ前政権の時代から、バグダードの中央政府は、目先のISIS打倒にばかり意識を集中するあまりシーア派民兵の横行には目を瞑って、ISIS生き残りの最大要因であるスンナ派部族の動向を敢えて無視している様子だ。サダム・フセイン政権時代に長く差別されてきたシーア派のルサンチマンを、スンナ派に対する攻撃を黙認することによって今頃晴らしているように見える。
それというのも、アンバール県などに住むスンナ派部族の多くは、シーア派が主導する中央政府がイランの息のかかったシーア派民兵のスンナ派攻撃を黙認したため、主としてその脅威に対抗する目的で、旧バース党員等の反政府勢力とともにISISに加担している側面が強いからである。
したがって、シーア派民兵を毛嫌いしているスンナ派部族地域に敢えてシーア派民兵を展開させれば、その結果、さらにスンナ派部族をISIS支援の方向に追いやることになりかねない。正にISISの思う壺にはまることになるだろう。
アメリカ空軍の継続しているISIS武装勢力に対する空爆作戦も、シーア派民兵の対ISIS地上戦を間接的に支援する結果となり、これはイラクのスンナ派住民の反米感情を、イラク戦争後の米軍占領当時と同じ位高めてしまうことになるかも知れない。
やはり、スンナ派部族勢力をISISから切り離す措置が、まず第一に必要だろう。この点で、恰好の前例はある。2007年から8年にかけて、今回同様にスンナ派武装勢力(ISISの前身であるイラクのアル・カーイダ)の脅威が高まって、アンバール県が不安定化した時、米軍は増派に先立ってスンナ派部族の「覚醒評議会」を編成させ、スンナ派部族勢力を反アル・カーイダの戦闘に協力させることに成功しているのである。
イランの影響を受けたバグダード中央政府のシーア派民兵利用策で、スンナ派地域住民の敵意を却って高めるよりは、スンナ派部族勢力をISISから離反させる方策を講じることの方が、ラマディを奪還してアンバール県の治安を回復するための近道であろう。
思い切って、米軍がイラク西部のスンナ派住民の安全を保障してやり、北部クルド自治区と同様のスンナ派自治区を構築してやるという選択肢も考えられる。ただし、これにはイランもバグダードの中央政府も猛反対するのは確実である。オバマ米大統領にも、そこまでイラクに介入する気は毛頭ないだろう。
しかし、ISIS打倒を最優先するならば、イラクのスンナ派部族達に、治安と経済開発の両面で十分なインセンティブを与える必要があると自分には思われる。
ラマディは、シリアからユーフラテス川に沿ってイラクに越境攻撃してきたISISにとって、シリアおよびヨルダン国境との交通線を抑えるためにも是非とも確保しておきたい要衝であり、近くには米空軍の基地もある。イラクの首都バグダードからは、西方にわずか110km程度の距離しか離れていない。
この戦略上極めて重要な都市が陥落してしまうとは、依然としてイラク政府軍と治安部隊の作戦遂行能力が大いに不足していることを物語っている。3月3日にイランのイスラーム革命防衛隊、特にその特殊部隊であるアル・クッズ(クッズとはエルサレムを意味する)の影響下にあるシーア派民兵の力を借りて、ようやくティクリートをISISから奪還したというのに、その成果を無にしかねないイラク政府側の失態と言えるだろう。
バグダードのアバディ首相は、劣勢に陥った政府軍を増援するために、シーア派民兵のアンバール県への投入を要請したようだが、これは極めてリスキーな選択である。
どうもマリキ前政権の時代から、バグダードの中央政府は、目先のISIS打倒にばかり意識を集中するあまりシーア派民兵の横行には目を瞑って、ISIS生き残りの最大要因であるスンナ派部族の動向を敢えて無視している様子だ。サダム・フセイン政権時代に長く差別されてきたシーア派のルサンチマンを、スンナ派に対する攻撃を黙認することによって今頃晴らしているように見える。
それというのも、アンバール県などに住むスンナ派部族の多くは、シーア派が主導する中央政府がイランの息のかかったシーア派民兵のスンナ派攻撃を黙認したため、主としてその脅威に対抗する目的で、旧バース党員等の反政府勢力とともにISISに加担している側面が強いからである。
したがって、シーア派民兵を毛嫌いしているスンナ派部族地域に敢えてシーア派民兵を展開させれば、その結果、さらにスンナ派部族をISIS支援の方向に追いやることになりかねない。正にISISの思う壺にはまることになるだろう。
アメリカ空軍の継続しているISIS武装勢力に対する空爆作戦も、シーア派民兵の対ISIS地上戦を間接的に支援する結果となり、これはイラクのスンナ派住民の反米感情を、イラク戦争後の米軍占領当時と同じ位高めてしまうことになるかも知れない。
やはり、スンナ派部族勢力をISISから切り離す措置が、まず第一に必要だろう。この点で、恰好の前例はある。2007年から8年にかけて、今回同様にスンナ派武装勢力(ISISの前身であるイラクのアル・カーイダ)の脅威が高まって、アンバール県が不安定化した時、米軍は増派に先立ってスンナ派部族の「覚醒評議会」を編成させ、スンナ派部族勢力を反アル・カーイダの戦闘に協力させることに成功しているのである。
イランの影響を受けたバグダード中央政府のシーア派民兵利用策で、スンナ派地域住民の敵意を却って高めるよりは、スンナ派部族勢力をISISから離反させる方策を講じることの方が、ラマディを奪還してアンバール県の治安を回復するための近道であろう。
思い切って、米軍がイラク西部のスンナ派住民の安全を保障してやり、北部クルド自治区と同様のスンナ派自治区を構築してやるという選択肢も考えられる。ただし、これにはイランもバグダードの中央政府も猛反対するのは確実である。オバマ米大統領にも、そこまでイラクに介入する気は毛頭ないだろう。
しかし、ISIS打倒を最優先するならば、イラクのスンナ派部族達に、治安と経済開発の両面で十分なインセンティブを与える必要があると自分には思われる。
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