2015年4月21日火曜日

新卒3年以内に辞める新人に関する考察

  今朝のNHKニュースで、様々な企業が新入社員教育を工夫して、入社直後に退職する新人を減らそうと努力している様子が放送されていた。何やらAKBの総選挙のようなイベントを企画して、上司を投票で選ばせる企業もあるようだった。
  しかし、最近の若者が折角入社した会社をすぐ辞める理由には、バブル崩壊後の日本社会が抱える、より本質的で構造的な問題があるように思う。すなわち、戦後日本の高度経済成長を支えてきた社会制度である終身雇用と年功序列が過去のものとなりつつある現在、若者は入った会社で下積み時代を経ながらじっくりと自分のキャリア成長を育んでいく精神的余裕を失いつつあるのではないだろうか。
  厚生労働省の「新規学卒者の離職状況(平成23年度3月卒業者の状況)」によると、大卒新卒者の卒業後3年以内の離職率は32.4パーセントである。これが飛びぬけて高い率であるかと言えば、自分が大学を卒業した1986年当時でも俗に七五三(卒後3年以内に中卒で7割、高卒で5割、大卒で3割が辞める)という比喩があったから、今の若者が特別なわけでは決してない。

  大体かく言う自分も、当時たった2年足らずで、苦労して入社した都市銀行を退職して大学院に入り直した経験を持っている。現在との違いは、当時は日本経済がバブル景気に突入した直後で、再就職の不安を余り抱かなかったこと位だ。しかし、現実はそう甘いはずもなく、大学院に入り直すために浪人を1年したし、大学院を修了した後、研究職に就く迄また1年浪人してしまった。つまり、私の履歴書は空白の期間だらけなのである。その間、銀行員時代の貯蓄を切り崩しつつ塾の講師や家庭教師をして食いつないだし、法律系の資格を取ったりもした。

  結果的に退職してから自分の甘い判断の付けを払わされたわけだが、1年足らずの就職活動で自分のやりたいことや適性がわかるはずもないのは今も当時も同じであろう。そもそも、採用する企業側も数回の面接程度の手続きで応募してきた学生の適性を見抜けるわけがない。雇用のミスマッチは必然的に起きる。
  肝心なことは、制度としての終身雇用や年功序列を否定する以上、若者の雇用に関する流動性選好を政府も企業も織り込んで対応することだ。日本は欧米に比べて雇用の流動性がまだまだ低いだろう。日本経済再生のためには、企業サイドのイノベーションはもちろん必要であるが、そのためにも労働力の流動性をより高めて、雇用のミスマッチを解消していく施策を推進するべきだろう。
  なぜなら、イノベーションを起こすためにはなるべく多様な知識と経験を持つ人材が交流して知恵を出し合う必要があるから、雇用の流動性が十分に確保されていなければ、今の時代に画期的なイノベーションなど起こり得ないからである。日本以外の世界の大多数の国では、それが常識とされている。
   したがって、若者がすぐ会社を辞めることを阻止しようと教育に注力するよりも、従来雇用契約の上で曖昧だったキャリア成長のモデルプランを入社時点に明示したりする方が、今の若者たちのニーズに合っているのではないか。
  もちろん、政府による早期退職者に対するセーフティネットの拡充が要請されることは言うまでもない。

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