高校時代の同級生が、最近漫画家のヤマザキマリさんにインタビューしたそうだ。ちなみにその同級生は、雑誌の編集者である。
ヤマザキマリさんと言えば、代表作は阿部寛主演で映画化もされた『テルマエ・ロマエ』である。ローマと日本の入浴文化の共通性に注目して、主人公の浴場建築技師ルシウスが古代ローマ帝国と現代日本をタイムスリップする着想が非常に斬新で、とても面白い漫画であった。
さて、その『テルマエ・ロマエ』でルシウスの仕える皇帝が、ローマ五賢帝の三代目ハドリアヌスである。実は、このハドリアヌス帝は、五賢帝の中でも毀誉褒貶があって評価の分かれる皇帝である。
まず、先代のトラヤヌス帝がダキア王国、ぺトラ遺跡で有名なナバテア王国、そしてアルメニア王国とパルティア王国に遠征して、ユーフラテス川東岸にアルメニア、メソポタミア、アッシリアの3つの属州を置いてローマ帝国の版図を最大にしたにもかかわらず、後継者のハドリアヌスは3つの属州を放棄してユーフラテス川西岸まで撤退し、守勢に回帰したとして元老院で批判を浴びたと言われる。
また、そもそもハドリアヌス即位当初に、反対派のコンスル(執政官)経験者4人を粛清した疑惑も持たれている。何より、ユダヤ教を邪教として弾圧し、130年にエルサレムを自分の氏族名にちなんだアエリナ・カピトリーナと改称してローマ風都市に改造するとともに、132年にはユダヤ教徒の伝統である割礼を禁止した。
そのため、バル・コホバを指導者とするユダヤ人の大反乱(第二次ユダヤ戦争)が勃発した。ハドリアヌスは他の属州から軍団を動員することで、3年後の135年にようやく反乱を鎮圧することに成功した。
この戦争の終結後、ユダヤ地方は属州シリア・パレスティナと改称され、ユダヤ人は1948年5月のイスラエル建国までディアスポラ(離散)を余儀なくされたのである。反乱の失敗後、ユダヤ人はエルサレムへの立ち入りを制限されたが、313年のミラノ勅令によって全ローマ帝国市民の信教の自由が保障されて以後、ようやくユダヤ人も、1年に1日だけエルサレムへの立ち入りが許可されるようになったと言われている。
つまり、ヤマザキマリさんの『テルマエ・ロマエ』で重要なキャラクターとして登場するハドリアヌス帝は、ユダヤ人にとってはナチスのヒトラー総統と匹敵するくらい、不倶戴天の仇敵であったわけである。
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