2015年5月12日火曜日

アベノミクス成長戦略に関する分析

 アベノミクスの第三の矢である成長戦略は、まだ本格始動していないようだが、その中核的政策は、法人税減税と規制改革、TPP推進と成長期待分野への補助金重点割り当てによるテコ入れといったところか。

 先の投稿で触れた、『文藝春秋』6月号の浜田宏一先生の文章では、成長戦略について、やはり法人税減税と規制改革の重要性が強調されていた。しかし、いくら法人税を減税しても、それが投資に回されず企業に内部留保されたままでは元も子もあるまい。

 その辺の詰めの認識が、浜田先生に代表されるリフレ派はやや甘いのではないか。特に東京一極集中を防ぎ、人材を地方に引き止めて、地方経済を復活させる鍵が法人税減税であり、減税による税収不足は投資が回復してGDPが伸びれば結局回収できるという単純な論理展開が、自分には今一つしっくり腑に落ちなかった。

 自分の分析では、日本のデフレの原因は単なる貨幣現象ではなく、構造的な実質賃金の下落傾向による労働者の購買力不足に基づく消費(内需)の低迷にあり、したがって、単にサプライ・サイドに着目した成長戦略を講じるだけでは、かえって需給ギャップを拡大させる結果を招いて、むしろ不況を長引かせるだけに終わるような気がしてならない。

 日本の長引く不況の原因は、恐らく、多くの企業がIT分野やグローバリゼーションの流れに乗り遅れた結果、イノベーションが起きにくくなったことと、円高で主に製造業の工場が海外に移転して国内産業の空洞化が起き、内需が伸び悩んだことにあるのではないか。

 それまで人が行ってきた作業がロボット化やITによる代替で不要となったため、リストラされて正規雇用が非正規雇用に置き換えられるとともに、グローバリゼーションが進展した結果、資本市場の株価上昇圧力と国際競争力の不足から、この間に日本企業の人件費のカットが進んだため、雇用者分配率が継続的に低下していった結果、実質賃金が減り、消費が低迷したというのが、日本の長期デフレの実態ではないだろうか。

 とするならば、IT分野の専門性を持つ人材や、グローバルな商売に結び付くようなイノベーションを起こすことができるような専門的な人材を発掘し、育成することこそ、日本にとって最大の成長戦略となるはずだろう。こうした高付加価値な人材は、高額の報酬を期待でき、企業の投資を活性化させると同時に自らの消費も拡大させると思われるからだ。

 法人税減税と規制改革は、確かに外国からの投資を日本に引き入れる上で効果があるだろう。しかし、それだけで経済を成長させるようなイノベーションを起こせるわけではないだろう。供給サイドを強化するだけでは、恐らくだめだ。

 やはり人材を積極的に発掘、育成できるような雇用改革と、実質賃金の上昇を引き起こすような流動化された労働市場が必要だろう。そのためには、企業サイドが必要な人材の職務能力を明確化し、そのための能力向上を導くような人への無形投資を強化すべきであろう。新卒一括採用という、融通の利きにくい採用システムも見直すべきかもしれない。  

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