自分は時々、息抜きに深夜アニメを見ることがある。日本のアニメの洗練された絵柄と技術には、本当に感心させられている。それは、間違いなく世界一の水準だろう。ところが、アニメ業界で働く方々の待遇が、実はブラック企業並みの低いものだという事実を、最近のニュースで初めて知ったのである。
インターネットで読んだ4月30日のITmedia ニュースによると、動画マンは年収110万円、「とにかく定収入で長時間労働」であるのが実態なのだそうだ。
この記事を読んでみると、アニメーターの労働環境が、いわゆる労働集約型産業の最たるもので、一部の外食産業や建設業等の他の労働集約型産業に類似した欠点を多く抱えていることが問題であることを認識したのである。
人が労働力を提供する産業には、労働集約型産業と資本集約型産業がある。前者は、人の労働時間がそのまま売り上げにつながる性質を持つ業種のことで、外食産業のウエイターやウエイトレス、美容師さんや運転手さんなどがこれに該当する。
実はお医者さんや弁護士、コンサルタントのような、知識集約型の業種も実は労働集約型産業に属する業種と言えるだろう。彼らが平均的に高収入であるのは、労働時間当たりの平均単価が高いからに他ならない。
その意味で、労働集約型産業は軒並み多忙化する傾向がある。当該業種では、労働時間に比例して売上高が伸びる性質を持つため、業績を伸ばすためには雇用者を馬車馬のように働かせることが有効な企業戦略となるからである。
これが知識集約型の業種であれば、死ぬほど多忙を極めても提供する労働に対する平均単価が高いから高額の報酬を得ることができるが、単純作業と見なされている業種に一旦入ってしまうと、長時間労働の上に平均単価が低いために低収入に陥りやすい。
そうした業種では、雇用者が提供する労働に特別な熟練が必要とされないと思われているため、従業員がすぐ辞めても代りの人はいくらでも見つかると認識されているので、企業サイドに従業員を教育しようとする意欲が湧きにくい。
その上、そうした業種では、労働に対する平均単価を上げる必要も感じないことになりがちなので、いわゆるブラック企業化しやすいと言えるだろう。
したがって、アニメ業界の低待遇を改善するためには、アニメーターを知識集約型に変えるか、あるいは、機械化等によって人間の労働力が寄与する部分を減らして生産性を高める、資本集約型に業態を変換する必要がある。前者はともかく、後者はかなり大きな資本を初期に投資する必要があるので、零細企業が多数を占めると思われるアニメ業界では、恐らく資本集約産業化は困難だろう。
とすれば、やはりアニメーターの知識集約化と正社員化が必要だろう。京都アニメーションのように、敢えて東京を離れて地方に活動拠点を移してみたり、スタジオジブリのように株式会社として正社員を採用し、福利厚生を改善して社員の能力を引き出すという方法が当面は好ましいかもしれない。
しかし、最終的には労働に対する平均単価を上げる努力をして、知識集約産業化していく道を模索するべきだろう。しかし、素人である自分が報道で知る限りでは、その道は遥か遠いものであるようだ。アニメ業界の皆さんは、決して屈することなく、明治時代の日本人達のように、「坂の上の雲」を目指していただきたい。これは、深夜アニメの一ファンとしての、実に無責任な感想に過ぎないものなのだが。
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