先日シリアの首都ダマスカスの思い出について投稿したが、大事なことを忘れていたので、補論として追加で投稿してみたい。それは、日本人に是非アラブ料理を賞味していただきたいということだ。
日本では最近、トルコのファーストフードであるドネル・ケバブの屋台など、トルコ料理が進出しているが、中東料理で最も洗練されているのは、恐らくレバノン料理だろう。世界三大料理として、一般的にはフランス料理、中華料理、そしてトルコ料理が挙げられるが、そのトルコ料理の基となっているのはアラブ料理、特にレバノン料理といっても過言ではないだろう。
レバノンでは、まずメッゼという前菜を注文する。これが実に多彩な料理で、これだけで日本人にはお腹一杯になる程である。ちなみに、ホブスという平たい丸いパンとキュウリや人参などの野菜のスティックは無料で大量に供されるので、これはいくら食べても懐具合を心配する必要はない。
ホブスや野菜スティックには、前菜で供されるホンモスやムタッバルなどのペーストを付けて食べる。前者は、ヒヨコ豆をすりつぶしたペーストに白ゴマのペースト(タヒーナと言う)とニンニクなどで味付けし、オリーブオイルをかけたもので、ホブスに実に良く合うものだ。後者は、ヒヨコ豆の代わりに焼き茄子をすりつぶしたペーストにタヒーナを混ぜたもので、独特の苦みがあってこちらもとても味合い深いものである。
前菜の後は、サラダと主菜である肉料理を注文する。サラダはオリーブオイルと塩、ヨーグルトなどであっさりと仕上げたもので、日本人の口にもよく合う。この時、モロヘイヤのスープなどを注文してもいいだろう。中東料理のスープも大変美味しいものだ。
主菜は肉料理だが、中東では豚肉はイスラームの戒律で絶対食べないし、牛肉も一般的ではない。やはり羊肉か鶏肉がメインである。ミンチ肉や角切り肉に香辛料をふんだんに混ぜた、ケバブ料理がやはりお勧めである。玉ねぎやトマト、ピーマンや唐辛子も肉と一緒に焼いて出されるので、結構なボリュームがある。21世紀初頭、自分がダマスカスに駐在していた時は、レストランで夕食にラムチョップのステーキをを注文してよく食べたものである。ケバブもよく食べていた。
食後はアイスクリームかコーヒー・紅茶を頼むのだが、アイスクリームはともかく、飲み物は日本と比べて貧弱である。それというのも、ダマスカスの大抵のレストランでは、コーヒーはネスカフェと言ってインスタントだし、紅茶もティーバックとお湯が注がれたカップが無造作に提供されるだけだからだ。はっきり言って、食後の余韻を楽しむ上では興ざめと言わざるを得ない。
しかしながら、ダマスカスのアイスクリームは日本で食べるハーゲンダッツ以上の質とボリュームがある。イスラーム教のアラブ諸国では飲酒が戒律で禁止されているため、大人でも甘党が多い。そのためか、アイスクリームや各種の甘い菓子類が非常に発展したのである。それゆえ、ダマスカスのアイスクリームは安くてボリューム満点で、かつ美味なのである。
ファーストフードで代表的なのは、シュワルマとチキンの丸焼きである。前者は、トルコ料理で言うドネル・ケバブと同じもので、鉄串にぐるぐる巻きつけた香辛料などで味付け済みの肉(羊、チキン、あるいは牛)を回転焼き肉器で炙ったものをナイフで削ぎ落として、ホブスに野菜と挟んで食べるものだ。渋谷や原宿などでは、トルコ料理のドネル・ケバブとして、日本人も味合うことができる。
チキンの丸焼きは、城壁で囲まれたダマスカス旧市街やかつてアラビア半島に繋がるヒジャーズ鉄道の始発点であったヒジャーズ駅の近くにある、マルジェ広場の周辺で簡単に購入することができる。一羽丸ごとは1人ではとても食べきれないので、半羽を買ってよく食べたものだ。これも、アラブの手ごろなファーストフードと言えるだろう。
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